2008年7月9日水曜日

指しゃぶりの効果

病室にはぽくこのベッドが中央にあり、窓際に付き添い用の簡易ベッドがある。
胃腸に問題があるかもしれないのでできる限り絶食するように言われた。
たとえ点滴があって脱水の心配がなくても胃の中はからっぽ。生まれたばかりのぽくこがお腹を空かして眠れないのは自然なことだ。
あやしてあやして泣き疲れて眠るのを待っていると看護婦さんがきて少しなら授乳してもかまわないと言うので
少しだけオッパイを吸わせてあげると吐き戻すことなくぽくこは眠りについた。

その日、一日中ぽくこは不機嫌だった。
おっぱいも究極にお腹が空くまで飲もうとしない。
焦る私に「点滴があるから心配要らない。無理に飲ませなくても大丈夫」と看護婦さんが何度も声をかけてくれた。
ぽくこは検温や聴診器をあてられても泣くこともなく暴れることもない。
実におとなしくしている。
先天的な疾患を心配してレントゲンやエコーの検査をしたけれどもこのときもじっとこらえていた。

ただ一つ・・
最近覚えた指しゃぶり。それを考えて点滴は左側にしてもらったのだけれど
しゃぶれないとなるとどうにもこうにも左側をしゃぶりたくなったらしく
固定板をつけ包帯をぐるぐる巻きにされた左手をじっと見つめては何度となく口に運ぼうとトライ・・
そのたびに板がおでこをコツンと打った。
この自由にならない左手がどんなにかぽくこのストレスになっているか最初のうちは気づきもしなかった。
しかし家にいるときよりもずっと濃密にぽくこと二人きりの時間を過ごす病院生活でぽくこの不機嫌がどうもこの不自由な左手に起因することがわかってきた。
私が思うよりずっとずっとぽくこは指しゃぶりをすることで精神を安定させていたらしい。
乳児の血管に針を刺すのはとても難しいことなので取り替えて貰うことは叶わなかったけれども
不自由な左手に執着している気持ちをそらし忘れさせるようにすること、それだけで随分ぽくこの気持ちは晴れていった。

一度脱水すると、ミルクを与えても吸収できず吐き出してしまう。そして更に脱水が進むというスパイラルに陥ってしまう。
入院した夜、当直の先生がそう教えてくれた。
丸一日点滴をしたら劇的にぽくこは元気になってきた。
それでもオッパイを飲みたがらず、狂ったように泣きじゃくるから心配は収まらなかった。

エコーやレントゲンの結果に異常はなかった。
あぁよかった。本当に良かった。

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